Glenrowan という変わった町
メルボルンから車で2時間半ほど離れたところに、Glenrowan(グレンローアン) という小さな小さな町があります。5分もあれば端から端まで歩けてしまう町の中心部は、鉄の鎧をつけたブッシュレンジャー(盗賊)だらけ。
カフェにも…
パブにも…
郵便局の前にも…
どうしてこんなことになっているのかというと、ここは1880年6月、伝説のブッシュレンジャー、ネッド・ケリーと仲間たちが追い詰められ、ついに逮捕された場所なのです。町の人たちは、まるで1880年にネッド・ケリーの逮捕劇を見ていたかのように生き生きと当時のことを語ります。きっと何人かは、その時代から来ているはずです。
ネッド・ケリー逮捕劇の重要な舞台、Glenrowanの駅(今は廃線)。
愛された無法者ネッド・ケリー
母親はアイルランド系の貧しい家庭出身、父親は元囚人という出目のせいで、ケリー一家は警察から不当な扱いを受け、ネッドと彼の弟は盗賊として生きるしかありませんでした。彼らは貧しい人たちには優しく、権力者を狙って悪事を働いたと言われています。
Glenrowanで逮捕されたあと、メルボルンの監獄で死刑の判決が下されたときには8万人の反対署名が集まりました。しかし、民衆の声は届かず、1880年10月ネッド・ケリーは26歳の生涯を閉じることになります。
詳しくはWikipediaで...
おみやげもネッド・ケリーづくし
町で売っているおみやげもネッド・ケリーづくしです。2丁拳銃を構えるネッド・ケリーのイラストが入った帽子やTシャツを始め、様々な「お尋ね者グッズ」に出合えます。
私が買ったのは、学校へ持って行ったら物議を醸しだしそうな暴力表現盛りだくさんの子供向けアクティビティブック(初版1977年)。
ポリコレもびっくり。
裏表紙は、ネッド・ケリー犯罪史マップ。
「警察隊にいたスティール軍曹は、銃撃戦をしているうちに我を忘れ、動くものがあれば、人でも物でも撃ちました。彼は、母親と逃げる小さな男の子まで撃ったのです。数字の順番に点を結んで、ほかに誰が撃たれたか見てみましょう。」
郵便局で売っていたカレンダーは、カレンダーというよりネッド・ケリー逮捕に関する同人誌。「こんなの誰が読むの?」と思いながら、つい買ってしまいました。
もちろん6月28日のところには、「1880年、Glenrowan で包囲された」とマークされています。この月の資料は、ネッド・ケリーが射殺した人物の被弾箇所を詳しく解説。ケリーは裁判ですべての殺人について正当防衛を主張しましたが受け入れられませんでした。
Glenrowanに行ったら見逃してはいけないツーリストセンター
いろいろと変わったものが揃っているGlenrowanのなかでも、特にすごかったのがここ、グレンローアンツーリストセンター。ネッド・ケリーの逮捕劇をテーマにしたお化け屋敷風アトラクションがあります。看板に「返金はしません!」と書いてあるところが、怖いもの見たさの心をくすぐりますね。
なかは、めくるめくトワイライトゾーン。ディープな世界が広がっています。
ここで見たものが衝撃的だったので、あれは一体なんだったのかと、私は調査を始めました。まず、パンフレットに載っているアトラクションの案内人ジェシーとボブは、孫とおじいちゃんです。そして、ツーリストセンターの80年代風ロボティックアトラクションは、ボブじいちゃんが人生をかけた大スペクタクル。現実とか歴史という観点から見れば「いやぁ、それはないだろう」と思う部分もありますし、ポリコレ視点で見たら怒られそうな表現もあるのですが、いいんです。だってこれはボブじいちゃんが語るネッド・ケリーの物語なのですから。
オーストラリアのマスメディアでもボブじいちゃんのアトラクションは話題になっていました。テレビにも出ていたので当時の番組の動画リンクを貼ります。かなり前からあったんですね。
www.glenrowantouristcentre.com.au
入場料は大人31ドル。地方のアトラクションにしては「やけに高い」価格設定となっています。しかし一生に一度の体験と思えば安いものでしょう。
シドニーとメルボルンの間にある小さな町。こんなところまで行く日本人はあまりいないかもしれません。だって20年近くこの国にいる私でも初めて行きましたから。でもチャンスがあるなら見逃してはいけないGlenrowan。心の隅にとめておいてください。
ヒースレジャーとオーランドブルームが出演しているネッド・ケリーの映画。
ミックジャガーも1970年の映画でネッド・ケリーを演じています。